加齢とともに起きる身体の変化

高齢者になると、身体の機能が衰え、傷病のリスクが高まることは知られている通りである。具体的には、まず足腰が弱くなり、転倒しやすく、関節の痛みを伴うことが多くなる。特に女性の場合、骨粗鬆症に罹患し、骨折のリスクが増すことも少なくない。歩行が困難になると、行動範囲が狭まり、他人との交流が減ることにもなるだろう。もちろん、車椅子を使用すれば移動は可能だ。介護者の支援を得られれば、他人とのコミュニケーションを図れる。

また、足腰の弱体化とともに、聴力も減退する。いわゆる老人性難聴と呼ばれるものだ。耳が遠くなると、他人とのコミュニケーションが難しくなって、孤立感を深める。補聴器を装着すれば、ある程度聴力を取り戻せるものの、小さな補聴器を管理するのは高齢者にとってかなりの負担だ。そのためそういう高齢者がどんな苦労を抱えているか周囲の人間が理解し、気配りすることが欠かせない。高齢者の介護を行うときは、老人性難聴の症状・対応方法を知っておく必要があるだろう。

記憶力の減退も年齢を重ねるごとに著しくなる。特にSTMと呼ばれる短期記憶の衰えが激しく、最近の出来事をすぐ忘れてしまう。何をどこに置いたか忘れることが多く、物の紛失が増える。誰かに盗まれたのではないかと疑心暗鬼になる高齢者も珍しくない。ただし、嫌なことも忘れるので、ストレスが減るという一面もある。

こうした身体の変化は、遅かれ早かれ誰にでも生じうることだが、実際に自分の身に降りかかってくると、心理的ダメージは大きいものだ。年齢を重ねるごとに体験する身体の変化について学び、老いに備えることは、全ての人に必要と言えるだろう。